衒学遊戯舎

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野狐禅問答

『HALO Infinite』は20年待ち望んだ「初代HALOの続編」だった

『HALO Infinite』のキャンペーンをクリアした。

端的に言えば「初代HALOの続編」というのが全体を通して受けた感触だった。

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難易度はノーマル。収集要素はスカル含めてフルコンプ。ここまで収集要素を集めたくなるほど遊び込んでしまうとは自分でも流石に思わなかったので勢いで今回感想を書こうと思い立ったのだ。


20年近くシリーズ作品を遊び続けた上で「好きなHALOはどれか?」を振り返る際、先ず『HALO:CE』と『HALO3: ODST』、次点で『HALO3』と『HALO:Reach』、その次に『HALO5』『HALO4』『HALO2』といった順に挙げたくなる。それほどまでに自分が当時遊んだHALOシリーズの第一作『HALO: Combat Evolved』の衝撃は計り知れなかったのだ。

新しくも納得性の高かった一人称視点操作は早々に手に馴染み、周囲のNPCに尊ばれる表現は主人公としての没入感を生み出し、洗練されたアートワークは人類側も遺跡側もエイリアン側も全て新鮮で、フラッドは純粋な恐怖だった。武器はどれも特徴的で効果音や演出の特異さも相まって全てが使っていて楽しく、これらをとっかえひっかえ持ち替えながら試すつくりは当時新しい遊びであると感じた覚えがある。

また現行のゲームパッドにおけるシューター系の操作スキームの雛形を作り上げ、自動回復システムを一般化させ、2種の武器を持ち運ぶ形式を採用し、ボタンひとつで殴りを出すことが出来て、ヘッドショットでトドメをさせるようになる。たとえ体力が尽きても自動保存された直前のチェックポイントから再開される、AIづくりが敵味方どちらも滑らかに動き戦場感を憶えることが出来るなど、革新的なシステムが多数採用されておりその幾つかに気付いただけでも衝撃が物凄かった。

そしてミッション2の「知られざる大地」とミッション4の「カートグラファー」は特に、構造物に出入りしつつ乗り物を駆使しながら広大なフィールドを探索し点在する敵と戦いながら進んでいくゲームプレイの臨場感が余りにも凄まじく、当時「"ガルの宇宙港"以上に入り組んだ構造と開放感を覚えるステージってのが実現したのか」と驚いた記憶がある。これ試遊台として札幌そごう跡地はビックカメラで遊んだらそら本体に手を伸ばしてしまうわな。

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クラシックなポリゴンゲームの「"広さ"を初めて実感した作品」といった話題だと特に「ハイラル平原」辺り話題に挙がるが、自分にとってそういった「解放感と探索感」を最初にハッキリと覚えた場面は『HALO』の「Alpha HALO」こと「Installation 04」だったのだ。元々若い頃にMacintosh(Performa)で『Marathon』を遊んでいたこともあり、(後から知ったことだが)同じデベロッパの新しいFPSがまたも自分の心を掴むとは思ってもみなかったわけだ。*1

だが『HALO』は路線変更してしまった。これは初代三部作が完結した後の4からといった話ではない、『HALO2』からだ。この時点で初代の要素を、良くも悪くも大きく変化して切り捨てられていたのだ。広大なフィールドは鳴りを潜めキャンペーンはリニアさ重視となり、ポリゴン数アピールの為にデザインの方向性は全体的に丸みを帯び、謎めいた雰囲気だったコヴナントは同じ常に地球語を喋るようになり、体力はHP部分を排した完全自動回復されるシールド制が全面採用され、対戦を見越した武器調整は各種大人しい性能に収まり、難易度設定を含めたレベルデザインは歪となり、ヘッドライトの輝度は下げられ物理的に使えない場面が半分を占めた。

そして何より頼りなさと頼もしさが同居していた一気に60発撃てるアサルトライフルがリストラされたのとハンドガンが弱体化の煽りを食らった点は、当時ヘッドショットに対してそこまで意識が向いてなかった身としては割と辛いものがあったのだ。そうはいっても操作感そのものは悪くなかったし、何より対戦が物凄く楽しかった事もあり、当時不満は有れど『HALO2』に対してある程度方向性の変化は呑み込む事は出来てはいた。

そして満を持して発表された『HALO3』は御存じのとおり、当時の集大成として完成した一本だった。ゲーム作りは2のそれを引き継いだものでありながら作品として唯一無二が過ぎたこともあり、2で打ち出された方向性の変化を知らず知らずのうちに受け入れてしまってたのだ。今までに無かった切り口だったモキュメンタリー形式の世界観紹介PVやジオラマを映す事で語らず語る事に成功した予告編、ニール・ブロムカンプが監督した実写トレイラーにジョセフ・コシンスキーが手掛けたCGIトレイラーなど、これでもかと映像攻勢を仕掛けることで発売前の期待を大いに抱かせた。

Halo Landfall
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Halo 3: Starry Night
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そして実際発売された『HALO3』は、眩しいくらいまでに色鮮やかな色彩表現と豪華さを何処までも盛り込んだ劇伴やグラフィック表現とそれを活かす演出、『HALO2』の要素を維持しつつ広がりを持たせたゲームプレイにこなれた武器調整、新しい概念のマルチプレイやシアター機能やゲームモードやスクショ共有という文化が生まれた土壌づくり、加えて「初代の要素も忘れてないよ」といった感じにアサルトライフル含めてしっかりと様々な要素が盛り込まれていた事もあり、当時無二の名作として結実したわけだ。

Halo 3: Believe
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ゲームの歴史を振り返る際「2007年の作品」というのは特に欧米では『HALO3』だけでなく『アサシンクリード』『BioShock』『Mass Effect』『Call of Duty 4: Modern Warfare』『Portal』『スーパーマリオギャラクシー』『ライオットアクト』『S.T.A.L.K.E.R.』『クライシス』『The Witcher』『Team Fortress 2』などがが「出現」「発生」した年だったこともあり、毎年何かしらの新しいものが生まれているビデオゲームの歴史の中でも「特異点」のひとつとして語られる年代として認識している人も少なくない。

そんなわけで『HALO3』はそういった特異点の中の一本だったわけだ。閑話休題。15年近く前の事だから個人的に一度振り返っておきたかった。

Halo 3 - E3 2007 "Official Trailer 2" [HD]
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そして「前日譚にハズレなし」の法則が当てはまった『HALO:Reach』は素晴らしく堅実なつくりだった事に加え、合間にリリースされた『HALO3:ODST』が「探索としてのHALO」を拾い上げてくれてしまってたのは当時非常に嬉しかった。HALO3のスピンオフとして作られた『HALO3:ODST』は探索具合や二丁持ちのオミットや体力制を含めて無印の要素を盛り込みつつ、地図を眺めながらの街並みの誘導に従うつくりが新しくも楽しかったし、全体を通して作り上げれたフィルムノワールな雰囲気が特に素晴らしく、個人的に上位に入るくらい好みのHALOだったのだ。

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あと『HALO4』はアートワークの尖り方が個人的には嫌いでなかったし、アーマーのバリエーションが爆発的に増えたのはほぼほぼ4からだったし、『HALO5』のスパルタンの強力なアビリティを後押ししたつくりは当時のFPSの機動力が上がったトレンドも相まって操作感の楽しいHALOだったし、ゲームモードのひとつウォーゾーンファイアファイトの大規模PvE戦闘感はシリーズの中でも随一だった。

そんなこんなで確かに4や5の話の流れは(今振り返ってみると)幕間のTVシリーズ感は否めなかったが、ゲームとしては納得出来てたので、これからも何だかんだ遊んでいくシリーズにはなるんだろうなぁとは思っていた。

今回の『HALO Infinite』が発売されるまでは。ここまで前置き。

『HALO Infinite』の「遊び」とは

今作『HALO Infinite』のキャンペーンがどんなゲームか一言で言うならばオープンワールドな探索FPSである。近いものとしては3以降の『FarCry』シリーズがそれに該当する。言ってしまえば既存の要素の組み合わせのひとつであると言えるだろう。

そして今作『HALO Infinite』に関してはこの方向転換が「巧いこと噛み合った」ように感じた。

というのも元々初代『HALO』は探索重視の一人称視点シューティングアクション作品として作られており、今作ではそのリズム感がそのまま戻って来たような感触を体験することが出来たからだ。ぱっと見マップの密度は近年のUBI作品等と比べると収集要素を含めオブジェクト間が広々としてるように感じるかもしれない。だがその分、移動経路として設計されているフィールドづくり全体がアスレチック的な作りを持っているため、「探索」と「戦闘」の状態変化が程よい配分で行われるように作られているのだ。

これによって本作のオープンフィールドは「何を探すか」というより「どう切り込んで行くのか」といった方向に考えをより巡らせるようなつくりになっており、移動そのものを攻略として見做すことが出来るような仕上がりとなっている。

広大なフィールドの中の拠点や重要目標に対して単独で険しい地形を乗り越え単独切り込むか、解放した仲間の海兵隊とともに車両に乗ってカチコミを仕掛けるか、航空ユニットを使った露払い後に自ら飛び降り降下して残りを殲滅するか、それとも戦車に乗って90ミリのタングステンの感触を提供するのか、行動計画やモチベに合わせてプレイヤーは様々な手段をとることが出来るよう作られているのだ。

そしてその間の途中途中でアップグレード用のアイテムやウォーキングシム的なオーディオログ、そしてマルチプレイ用の装飾類などを手に入れることが出来る。このオーディオログはほぼほぼが「空白の六か月に何が起きたのか」に焦点を当てたものが多く方向性として『~ODST』のログに近い感触を憶えることが出来る。

つまるところ『HALO Infinite』のフィールドデザインとは地形の起伏を含めて「きちんと飛び跳ねさせてくれるオープンワールド」として設計されている作品というわけだ。

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そもそもの『HALO』の「遊び」とは

シューターとしての『HALO』シリーズの特徴について改めて触れておきたい。

シリーズとしての『HALO』の特徴をあげるならば「基本的な体力が高めに設定されている」という部分を挙げることが出来るだろう。操作キャラであるスパルタンは初期状態の時点で「基礎体力+シールド」が備わっている。つまり敵を倒す際は攻撃を撃ち込みつづける必要のある仕様となり、彼我の接敵時の交戦時間が通常のシューター作品よりも長くなりやすいのだ、これによって撃ち合いの選択肢や駆け引きが生まれやすいゲームシステムとなっている。

ノリとしては『ジョンウィック』の辺りがイメージに近いだろう。至近距離で縺れ合いながら攻撃を撃ち込みあい辛勝する銃撃戦のスリリングさは本シリーズ特有のものとなっている。

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ジョン・ウィック:パラベラム』終盤の戦闘とかそんな感じ

加えてシールドシステムを採用することによって「どれだけ撃たれたら倒れるのか」が視覚的に分かりやすいので撃たれた際のリスクの測り方の目測も立てやすいのも重要な要素だ。また体力の高さによって仲間の取りこぼしたキルを拾ったり倒しきれなくてもアシストとして成績に加算されるので、複数人での行動も単純な火力増強だけでない利点の増加に繋がっているので、自発的な共闘感の促しとしても機能しているのだ。

そして体力の高さも相まってヘッドショットや殴り攻撃や重武器の重要性が特に高い作品にもなっている。体力が高いからこそ確殺できるヘッドショットの重要性が相対的に高く、殴りは実際強力だが射撃に対してのラグが生まれるし体力の高さも相まっていつ挟み込むかの状況判断が重要となるので、接敵してから判断如何によっては殴り負けや撃ち負けの場面に遭遇する。またこれによって複数人で入り乱れた戦いを行っている際に隙を突いて正確に相手の頭部に撃ち込む爽快感はひとしおで後述する効果音の作りこみも相まってヘッドショットも積極的に狙いたい作りにもなっているわけだ。

また武器の投射物の方向性も、見て避けやすい性能の「プロジェクタイル方式」を採用したものが多く、即着弾となる「ヒットスキャン方式」を採用している武器とは明確な性能の違いとして分けて実装されている。*2なので状況に応じた武器の使い分け、現在持ってる武器に応じた戦い方の対応が常により要求される仕上がりなのだ。

こういった「視認してからの中近距離での駆け引きの選択肢の多さ」で近いものとしては『スプラトゥーン』がある。スプラのブキの仕様は全てプロジェクタイル方式を採用しており、加えて攻撃の散らばりの変化によって射撃距離と攻撃時間と塗り効率にも影響しており結果として「攻撃を食らった」と認識してから対応できやすい極めてクレバーな仕様になっている。

「撃ちあい」としてのHALO

Halo Infinite | Multiplayer Overview
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それでは本題の撃ち合いの側面としての『HALO Infinite』にも触れておきたい。*3*4本作の射撃感はシリーズ屈指のシンプルさに回帰している。

引き続きADSは採用されてはいるものの『HALO5』のスマートリンクほど重要性は薄くなり、HSや狙撃を狙う以外で覗き込み操作を使う場面は大幅に無くなり腰だめ撃ちが基本となる為、射撃感も『HALO3』に近いものとなっている。ロードアウトの類も採用されていないのでゲーム開始前に迷うことがほぼなくなり、対してマップの武器の位置を把握する重要性が上がっているので実プレイそのものに専念できるようになってる部分が非常にありがたい。

初期武器についても、本作では大抵の場合アサルトライフル+ハンドガンの組み合わせがメインなので中近距離での撃ち合いが主となり、バトルライフル系の中遠距離武器前提の立ち回りも通常ルールでは抑え気味になっている。

そしてバトルライフルやコマンドーライフルといった中距離以上の武器は「やや強い武器枠」ということでマップ内から拾い上げて使う形式となっている。これによって手持ちの武器で戦う為にしても強い武器を手に入れる為にしても「リスポン地点から敵の居る地点へ動く理由」に繋がり、結果として毎試合激しい撃ち合いを期待出来るようになっている。また、マップ上の武器の出現についてはサーチボタンを押すことで都度把握できるし、ほどんどのマップフィールドデザインは程よく入り組んでるので遊んでいるうちに覚えやすい作りになっている。

加えてバトルライフルが初期武器のルールは所謂ランクマッチの枠にほぼほぼ収まっており、つまるところ「慣れた人向けの遊び方」として分けてくれているのがカジュアル勢にはありがたい。過去作だと初期バトライな試合はカジュアルに遊ぼうとすればするほど彼我のリスポン地点で延々撃ち合い続けるという状況になり易かったので、今回の仕様が物凄くしっくり来てるのだ。

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そして今作の全体的なゲームスピードは『HALO5』と『HALO3』の中間くらいの塩梅に調整されている点にも触れておきたい。他のFPSに比べると極端な話「重装甲鈍足が本作の特徴」と言っても良い仕様で、直截的な高速化を一旦見送って撃ち合いと進退や立ち回りの駆け引き重視にした調整に立ち戻ってくれたのは非常にありがたいのだ。

ゲームスピードの調整と言えば今作のスプリントは速度にあまり変化が生まれないような仕様になっている。それどころかスプリント中は射撃にも一瞬遅れが生まれるし、モーショントラッカーで相手に位置がバレてしまうリスクもあり下手に走ることはリスクの高い操作となっている。*5

では何のためにスプリントが実装されているのかというと、本作のスプリントはスライディング等を行うためのトリガーとして実装されているのだ。このスライディング操作はヘッドショットが特に重要な本作において相手の虚をつく為にもしゃがみやジャンプに次いで重要な行動であり、位置によって滑り降りるような加速を行うこともできる。

今までの仕様だと「スプリント+スライド」は「加速してさらに加速する」という調整が基本だったところを、「一瞬加速する」という操作にすることは、地形によってその動きの予測を立てやすくした事と相まって、落としどころとして妥当に感じたわけだ。つまり本作のスプリントのうまみは他のFPSや何なら前作HALO5よりも薄いものとして設定されており、純粋にパルクール的挙動へのトリガーとして機能しているわけだ。

このように本作が速度を抑える調整にすることでマップの密度を高めつつ出会いがしらゲームでない「狙い続けるゲーム」としての側面を丁度良く強化してくれたのは非常にありがたい。*6でもLaunch Siteの広々さだけはどうにかして。可能ならあのマップでBTBやらせて。

また本作の体力ゲージの仕様は、シールドゲージに加えて体力ゲージも追加した『HALO5』準拠の仕様が続投されている。これによってシールド剥がれた後本体側に何発当たったら倒れるのかの視覚的な判り易さも維持され、今作の仕様と相まってより状況判断とスリリングさを覚えることが出来るようになっているのだ。

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射撃感の重視の一環として敵を倒したときを中心に各種効果音が耳の奥に響くような調整が為されている事にも触れておきたい。Valve製FPSのような耳の奥に響くような効果音が本作にも過分に実装されている。なので基本的な銃器類の手触り、敵を撃ち抜いた際の気持ち良さ、或いは攻撃を受けた際の焦燥感は過去作随一となっている。

また、暗殺システムのオミットについても触れておきたい。FPSにおけるフィニッシュムーヴ演出は『HALO:Reach』が最初に採用したが、実際のところほぼ確殺の魅せ技以上の機能が出てこなかったし、機能的な実装理由としては継続戦闘時の弾薬回復手段にした『DOOM(2016)』『DOOM Eternal』という回答例が出てしまっている現状、無理に実装する理由もないというのは物凄い思い切った仕様であると感じた。勿論後頭部を殴ることで一撃なのは変わらないので虚をつく重要性や楽しさは健在だ。開発側は「反応次第で実装するかも」的なこと一応言ってはいたが、暗殺モーションの実相を一旦見送ることでゲームスピードのリズムに途切れがなくなった感触を覚えているので、個人的にはこのままなしの方向でサービスを続けて良いんじゃないかなぁと感じる次第だ。

このように『HALO: Reach』から『HALO5』まで何かしら追加されていた要素や演出の類は幾つかは続投しつつも大幅に調整されており、本作は『HALO3』の頃のシンプルな撃ち合いとしての「攻撃を当てる」だけでなく「攻撃を当て続ける」「狙い続ける」必要のあるFPSとして原点回帰した仕上がりになっている。

下手に競合IPの要素を取り込む必要が無いって事に気付いてくれたのは大きな前進よ。自由度の高いロードアウトは裏を返せばバランスを考えないと結果的に最適解を求めてしまうし、広大なフィールドを使った大人数マルチプレイは巧くやらないと延々マラソン強いらせて待ち伏せ狙撃の餌食になるだけだし、性能に影響する部分まで装備アンロックの仕様を採用すると作業感を憶えてしまうし。

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結果として『HALO Infinite』はシリーズ屈指の「撃たれたら痛い」「死ななきゃ安い」感触を憶えることが出来る対戦FPS作品として調整されているのだ。*7また今作は特に撃ち合いが楽しく仕上がっているので、CTFやストロングホールド等のオブジェクトルールだけでなく、もっとシンプルな「スレイヤー(チームデスマッチ)」等のルールでも同じように十分遊びごたえのある作品に仕上がっているのも有難い。

おかげでキャンペーンやシーズンパス完遂した後になっても尚引き続きフレンド氏とDiscord等を用いてはしゃぎながらオンラインに乗り込んで対戦し続けている。こういった部分でも今も尚楽しむことが出来る作品になるとはとは思わなかった。本項目を書いてて途中からマルチプレイ部分の話が混じってたが言わなきゃバレないだろう。

『HALO Infinite』のキャンペーン部分が『初代HALO』の良さをに再注目したのに対して、射撃特性の仕様を含めたマルチプレイ部分は『HALO2』『HALO3』準拠の「良いとこどりの」仕上がりになっているのだ。一度仕切りなおしが行われ枝葉のギミックがそぎ落とされた、アリーナ系対戦FPSとして回帰した『HALO Infinite』を強くお勧めしたい。

「物理遊び」としてのHALO

『HALO』シリーズの重要な要素の一つに「物理表現」がある。この物理表現の重要さは単純な絵としての派手さや馬鹿馬鹿しさの目的だけでなく「地面に落ちてるオブジェの存在感の強化」といった側面もある。

取得できるアイテム類にも常に物理特性が付与されることで地面に転がってるオブジェとしての意識もしやすく落ちてる武器や装備を拾う感触を憶えやすいのだ。これは常に武器や装備を取っ替え引っ替えするのが基本な『HALO』シリーズのゲームデザインに於いては特に重要な要素となっている。その場に落ちるだけでなく「散らばって転がる」というのは「つい拾い上げたくなる」実在感や存在感を付与させる効果が生まれる為、特に『HALO』では重要な要素となっているのだ。

Halo Infinite Mythbusters - Vol. 1
各作品のシステム的仕様がどこまで適用されてるのか毎回検証しているチャンネル
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加えてこの物理特性を常に意識させることでワートホグをはじめとした乗り物類の挙動の把握にも繋がっているし、爆発系の武器や装備の威力が視覚的に判り易くなる事でグレネードの危険範囲の目測も立てやすくなる等、本要素が担う役割は根幹のゲームプレイの感触に繋がる重要な要素となっている。

つまり『HALO』シリーズのオブジェクトひとつひとつが分かりやすく動く物理演算というのは、『Half-Life2』や『Portal』などのパズル的な側面を押し出したそれに比べれば、確かに直接のゲーム性としての意識の度合いは抑えられてはいるものの、プレイフィールを構成する要素として大変重要なピースとなっているのだ。

そしてこの物理エンジン遊びとしての『HALO』は、『HALO: Reach』辺りまでは判り易く残っていたのだが『HALO4』や『HALO5』と続くにつれてグラフィック周りのテコ入れを含めたモダンな要素に押し流される形で実質形骸化していた傾向が存在した。

その流れで今回の『HALO Infinite』、ゲームエンジンが全く新しいものを新造したうえで作成されていると聞いたとき当初は幾らか不安を憶えていたのだが、実際発売され遊んでみたらそれは全くの杞憂で『HALO3』辺りまでのやりすぎなくらい誇張された物理演算表現が実装された『HALO』として新生した。

結果、コリジョンと物理演算のオバケとなった今作『HALO Infinite』の対戦は特に「そんなことなる!?なってるわ・・・」なシチュエーションの遭遇頻度が高い作品としてバラエティ性の高い操作感や化学反応を実現しているのだ。

Halo Infinite WTF & Funny Moments #24
珍プレー好プレー集を投稿してる動画シリーズ、フライトテスト開始時からほぼほぼ毎日投稿してる(2022年1月現在)
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「兼ねる」アビリティ

マスターチーフのアビリティは大きく分け、「ドロップウォール(設置盾)」「脅威センサー(索敵装置)」「スラスター(急加速)」そして「グラップルショット(跳躍等)」の4つ用意されており、これらをキャンペーン中に使い分けていく形式となっている。

対戦ではこれに「リパルサー(反射)」「オーバーシールド(耐久力強化)」「アクティブカモフラージュ(透明化)」が加わる。

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今作のアーマーアビリティは対戦ではアイテム形式で拾うことで使えるようになり、回数制限や仕様タイミングを任意で発動できる仕様となっており。「いつ拾って使うか」といった戦略性が過去作に比べて高くなっている。加えてアイテム方式という性質上、性能自体も彼我の得点差を覆しかねないポテンシャルを秘めた強力な調整になっている。

この仕様は『HALO3』のアイテム方式、『HALO:Reach』『HALO4』のアーマー装着方式、『HALO5』の機動力その他基礎性能にに影響を与える性能といった過去作の良いとこどり且つ取捨選択を行い調整された仕上がりになっており、納得度合いの高さと強力さの両立に成功しているのだ。またロードアウトや基本操作では無くなったため全員が全員無理して使う必要も無くなったというのも間口の広さに繋がっており、こういった部分でも『HALO3』的なシンプルさに回帰したFPSとしての性質を維持できている要素のひとつというわけだ。

そして本作のアーマーアビリティの幾つかはひとつの動作に複数の機能や使い道を内包した「兼ねた性能」となっており、様々な搦め手を行う事が出来るようにもなっている。

グラップルショットはただの移動だけでなく、地面に落ちている武器やアイテムの取得としても使えるし、フュージョンコイル等の爆発物を即手に取って投げつけることも出来るし、乗り物に打ち込めば過去作で実装されている乗り物の奪い取りをより安全に行うことが出来るし、相手に撃ち込めば急接近できるのでそのまま近接攻撃や至近射撃を行うことで不意を突いて倒すことも出来る。

またリパルサーはその反射という特性から、グレネードその他の投射物を跳ね返すだけでなく、敵スパルタンとの距離の確保に使用できるので射撃の仕切り直しが出来たり、床に向けて放てばより高く跳躍も出来る。そして乗り物の突進に対しても防御手段となるので対抗策として極めて強力なアビリティなのだ。

加えてキャンペーンでは「アビリティそのものの強化」という要素も実装されている部分にも触れておきたい。

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本作『HALO Infinite』のキャンペーンでは「スパルタンコア」と呼ばれるアビリティポイント枠のアイテムがフィールド上に散らばっており、取得数に応じて強化するためのスキルポイントを手に入れることが出来る。

そしてこの強化を行うことで、スラスターは連続使用可能回数の上昇に加えてアクティブカモフラージュの効果が付与されるし、ドロップシールドは範囲拡大だけでなくシールド越しに射撃することで乗り物等に効果的なEMP効果を通常の銃撃に付与出来る。そして脅威センサーは投下個数の増加に加えて敵HPゲージの表示が備わり、グラップルショットはクールタイム短縮以外にもスタン効果と近接攻撃押下による突進攻撃が付与されるのだ。

この「グラップルショットからの突進攻撃」は特に強力で、『HALO5』のスーパーヒーロー着地こと「グラウンドパウンド」とほぼほぼ同じような効果となっている。最終強化で着地地点を中心にスタン効果を撒くことも出来るので敵陣に突貫する際の一番槍として非常に効果的なアビリティとなっているのだ。

つまりグラップルショット特には判りやすい位、様々な機能を内包したアビリティとなっているのだ。敵をスタンさせ接近して、近接攻撃を押下するとグラウンドパウンドが発動するし、強化すれば着地地点でEMP爆発も発生させることが出来る。シールドが無くなった時は逃げる為の跳躍手段として機能するし、武器や爆発物を引き寄せてて手に入れる事にも使え、乗り物を安全に奪うことも出来、オマケに盾持ちジャッカルの盾を一時的にのかせる事も出来る。

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そして重要なのがグラップルショットの仕様は「打ち込んだ後にどういった操作を行うのか」を考える猶予がある事で、狙うという特性上からも目的の場所に打ち込めるかそうでないかで立ち回りの選択肢を都度変えることが出来る柔軟性も併せ持っているのだ。

打ち込んだ後も引き寄せてる間の視点の方向によって「目的地にそのまま向かう」か「目的地を飛び越して勢いを持たせる」かといった選択肢が生まれるし、敵に撃ち込んだ後に周囲の爆発物や敵陣の密度如何によって突進攻撃に切り替えるのかそのまま飛び越して逃げるのかといった選択肢による戦略性を生み出すことに成功している。

つまり本作の「グラップルショット」は言わば「ヒートロッド」や「スラッシュハーケン」的に様々な場面で使うことが出来る装備というわけだ。

このように本作のアーマーアビリティは何れも「攻めて良し、逃げて良し」な性能となっており本作の探索や戦闘において非常に強力な要素として実装されているのだ。そしてこの「ひとつのギミックに複数の機能を内包させる」という作り方、物凄く任天堂的な柔軟さを備えており実際のところ触れていて物凄く驚かされたというのが正直なところだ。

ただキャンペーンでは特に「選択されたものを即時呼び出す」という方式なので十字キーの左押下から上下左右に選択させる形式なので慣れが必要ではある。いまだに操作間違える。こればかりは順繰りに切り替える方式で良かったんじゃとは思う。使いこなせたら凄い事になりそうではあるんだけど。

Master Chief is just a cooler Doomguy
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ところで先にも触れた通りアビリティ周りの強化はフィールド上のスパルタンコアを手に入れることで強化していく形式なのだが、本作のフィールドマップ上には最初からアーマーアビリティの位置はほぼほぼ表示されてるので、「強くなるために探索するための導線」が確りと構築されているので「通常の攻略の寄り道」くらいの塩梅で強化して行けるレベルデザインになっている点も非常に有難い点だ。

マップ表示に頼らずに探す必要のある要素は後述するオーディオログ等の寄り道部分のみに収まっているのだ。

また強化要素のスパルタンコアも使い道がこれらアーマーアビリティとシールドゲージのみに集約されているので、コアの射撃部分は全く変化することなく、特殊アビリティのみ強化される仕様なので基本的なゲームプレイとの棲み分けも出来ている。つまり直截的な所持弾薬数やジャンプ力などは最初から一貫した性能となっているわけで、アーマーアビリティボタンを使わない状態での基本的な操作感はゲーム開始時とゲーム終盤時で全く変化していないのだ。

これによって本作の強化要素はプラスアルファとしての能力強化に留まっているので、収集要素への強制が限りなく少なくなるようにできているわけだ。

飛び回る為の「オープンワールド

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グラップルショットを絡めた移動とそれを活かす為のフィールドづくりについても触れておきたい。というのも少なくとも物理的に行動の自由度が高いグラップリングフックが実装されているオープンフィールドのFPSというのはかなり珍しい立ち位置の作品だからだ。

Grappling Hooks in Different Games
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動画を見ればわかる通り基本的には特定ポイントに移動させる基本的な移動手段としての実装が主だ。「辿り着く」か「移動手段の演出」だったり「振り子的特性」である事が多い事に気付くだろう。

このように、通常のグラップルフックは特定の目的地に移動させるためのギミックが主だが『HALO Infinite』のグラップルショットは物理的な特性を特に重視しており「打ち込んだ方向に指向性を持たせる」という調整が強まっている。

物陰や曲がり角を移動する際は打ち込みながら視点を巡らせることで滑らかに回り込むことが出来るし、打ち込んだ後に少し視点をずらすことでスリングショットのような飛び出すような動きになるし、天井に打ち込んだ際は振り子のように跳躍距離を伸ばすなどと「打ち込みとその後の視点移動の組み合わせ」で様々な軌道を行うことが出来るわけだ。

そしてグラップルショットを手に入れ暫く使っていくにつれて、そこらに点在する樹々や岩々、フォアランナーの遺物、そしてバニッシュトの建築物は、飛び上がる際の目標として機能していることに気付くはずだ。つまりフィールド上の各要素が文字通り移動の為の「とっかかり」なのだ。射程距離内の最遠にある絶妙なでっぱりを探し打ち込み山を登り続けることで、これらが『ブレワイ』における「絶妙なくぼみ」と同じ効果を生み出している。

つまりこれによって「世界が違って見えるようになる」システムとして成立しているわけだ。『ブレワイ』をプレイした人ならゲーム内マップを眺める際に、直截的な「経路」だけではなく等高線から成る「起伏」も確認するようになるが、本作でも同じような現象を体験することが出来る。

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大自然なら岩や起伏や樹々、バニッシュトの施設ならブルートらしいトゲトゲした出っ張りや鼠返しのような構造の建造物、フォアランナーの遺物なら六角柱や緩やかな坂道や閉鎖的な大規模空間などがグラップルショットを打ち込んだ際の機動に大きくシナジーを発揮する作りになっている。

特にフォアランナーの遺物の六角柱は並べても必ず凸凹が発生するので打ち込む策を確保しつつ機動する際に引っかかりが発生せず「程よく離れたのち、再度打ち込む場所が見えてくる」というサイクルの生成に成功してるし、階段のような構造も与えることが出来るので一息つく為の目的地も発見しやすい。

加えてグラップルショットを絡めた移動において特に重要なのが「タイミング」「エイム力」である。

これは強化した後の再チャージのタイミングと、勢いがついた最大高度のタイミングが絶妙に噛み合った仕上がりとなっており、結果としてプレイヤーはグラップルショットの回復時間を把握しながら、いちばん最大の加速度を得ることの出来る射程内最遠の打ち込み点を探す為エイム操作を行うようになっていくのだ。

これは「狙って撃つ」というFPSの基本操作をそのまま移動に絡めたシステムとなっており、移動そのものに「遊び」を付与することに成功しているケースのひとつに加えることが出来る。これによってひとしきりの銃撃戦が終わった後(あるいは始まる前)の非戦闘状態でも戦闘時と同じくらいのエイム操作を要求されるようになり、遊びの方向性を維持したまま複数のパートを

つまり本作はグラップルショットを活用するための土台作りがシステム側でしっかりと設定されている作品なわけだ。

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このように本作では「上手く操作出来れば滑らかに上ることが出来、操作を誤ればひとたび奈落の底」という緊張感を生み出している。つまるところ「機能ありきな見た目であるほど、遊びの導線を確立しやすい」というビデオゲームにおけるアートワークの原理原則が本作『HALO Infinite』にも実装されているわけだ。

と言っても移動自体はそこまで過剰に高度な技術を要する入り組んだ操作性までにはなっていないので、慣れた後にしばしば発生する「効率よく移動したいと」といった類の欲が頭をもたげた時にはじめて様々な移動テクを発見/確立/駆使するようになるくらいの立ち位置であることは付け加えておきたい。

この「アスレチックとしてのフィールド」と「物理演算遊びとしてのサンドボックス」の二つを併せ持つ今回の『HALO Infinite』は、所感ではあるが『ブレスオブザワイルド』後のオープンワールド作品において模倣に成功したケースのひとつであると云う感触を憶えた。遊び方もそうだし何より移動や探索時の「考えの巡らせ方」が極めて近い感触だったのだ。謎解き探索が寡聞に盛り込まれた『ブレワイ』とはフィールドを移動する目的や方向性が違うし、『ブレワイ』のフィールドづくりに備わっていた「視覚的な引力」の概念は『HALO Infinite』では既存のオープンワールドのそれに近いものだった事もあったので一絡げに同列に語ることは出来ないが、少なくとも地形に対してのアプローチや物理的な遊びの奥深さの方向で極めて近いものを感じたのだ。

加えて本作ではフィールド内であれば所謂「見えない壁」な部位は極力排除されているように作られている。明確な壁となるのはワスプが未解禁な中での最初のエリアで、ここではメインクエストをクリアすることで橋が設置されるし、東側のエリア画は物理的に距離があるし無理に渡ろうとすると遮られる。要は「はじまりの大地」の構造に近いプレイフィールだったりする。


「シンプル」に回帰したデザイン

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今作のスパルタンアーマーの塩梅は物凄く丁度良い調整であると感じた。というのも今作のアートワークは『Reach』と『HALO3』を混ぜ合わせて初代風味にした塩梅が強い仕上がりとなっているからだ。主人公のスパルタンアーマーは「ミョルニルアーマーMk.6」系列でありながら、ディテールの細かさやエッジを効かせたゴツさも湛えた調整は、初代HALO時代の限られたポリゴン数で表現されたMk.Vのゴツさの意匠をも想起させる作りになっている。結果として「シンプルでありながら情報量の高いデザイン」として成立しているわけだ。

また、銃器についてもアサルトライフルがReach仕様の直線的なデザインを採用したの嬉しい点だ。特にReach版アサルトライフルは(当時の性能はともかく)見た目性能が高い造形だったのでこのデザインを基に各種カラーリングやカスタマイズを行うことが出来るのは凄く嬉しい。

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HALO4以降大幅に増えたアーマーバリエーションも今作の調整に対応させており、マルチプレイは特にアーマーカスタマイズの楽しさのおかげで自分だけのスパルタン感を憶えることが出来るようになっている。

加えて今作からの仕様としてチーム制の対戦時においても「自分のカスタマイズしたスパルタンの色がそのまま使える」ようになったという点もかなり大きい変更だ。敵と味方の判別はシールドや輪郭の色で判別する形式になっているので、自身の見た目も心置きなく設定する事が出来る仕様となっているのも有難い。

これによって自身で設定したスパルタンにて戦場を翔ける楽しさもまた過去作随一の仕上がりとなっているのだ。

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パス進行やショップ周りの仕様に関してはノーコメント。でもシーズンパスのレベル100まで完遂してみた感じ普通に遊ぶ分にゃ割と到達しやすいように感じたのでこのまま緩くしていってくれればよいかなぁくらい。「欲しいやつだけ買うわけだし別にいいんでね?」って事で値段周りやパスのアンロック周りについても今のところそこまで息苦しさは覚えてなかった。でも年末のホリデーイベントの「毎日1戦することで順次解禁」は負担が少なくて良かったし今後もこの方向性にしてくれると嬉しい。β時代のテンライはさすがにキツかったので。

美術設定や敵の造形についても触れておきたい。

今回メインとなる敵はバニッシュトと呼ばれるコヴナント独立組だ。最初こそ赤色基調のデザインに神秘性が無いと少し抵抗感を覚えていたたが、本作の敵はHALO2以降の翻訳言語を使う敵という事もあり、神秘性はフォアランナー側に寄せて明確な敵としてのデザインに寄せきっているのは遊んでいて納得感が出た次第だ。

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今作のフォアランナーの造形や建造物描写は現行機種の表現を採用しつつもこちらも過去作に近いシンプルさに戻っており。初代で感じた神秘さを想起させる仕上がりとなっている。特に静謐な意匠を湛えたフォアランナー施設内部の表現は文字通り磨き込まれた素晴らしい仕上がりだ。

先に挙げた探索に際した機能重視なデザインであることも相まって、過去作に立ち返ったシンプルな表現は、仕切り直しとしての『HALO』としてこの上ない出来であると感じた。

「辿る」ストーリー

シリーズものの作品の悩みとして「過去作をどれだけ把握しておくべきか」というのがある。個人的な肌感覚だが今作のキャンペーンそのものを遊ぶにあたっては、いきなり今作から遊んでも良いんじゃないかなぁと感じた。

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今作の話の描き方は全体を通して「過去に何かがあったのかもしれない」という雰囲気を纏った造りになっている。これは敵も味方もオーディオログ含めてそのように作られている。なので過去に起きた出来事それ自体よりも、それを踏まえつつ「今何をすべきか」が重視されており、話を進めるうえで置いてけぼりを食らったり途方にくれたり翻弄されるという状況に陥りにくい話作りになっている。ここら辺もまたいきなりコール条約発令中の絶体絶命状況下だった初代『HALO』準拠、もっと辿れば開幕周囲の敵を倒してからターミナルにアクセスし現況を把握する初代『Marathon』に近いものとなっている。

ゲームにおいて肝要なのは「どういった背景か」よりも「直近で何をすればいいのか」の明確な動機付けだ。これは本作『HALO Infinite』でも同様なのでなので本作から遊んでいても進行自体に迷うことは少ないだろう。

今作でやるべきことは「仲間を集めて装備を整えて戦略を考えて敵拠点を攻略して戦術を見直す」の繰り返しだ。背景についてはオーディオログを触れればよいし、過去が気になったのならその時改めて過去作に触れればよい。そういった柔軟性を本作は備えている。

加えて本作は状況が分かりやすく窮地に立たされており「話の流れに追い立てられている感」がかなり薄い作りだ。なので自分のペースで悠々と状況を把握しながらゆっくりと探索していってもプレッシャーを覚えにくいよう構築されている。一度終わってしまった状況からの挽回という背景というのは、ある種の開き直りに近い心持で戦うことが出来る効果を生み出しているのだ。

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オーディオログについても触れておきたい。本作もご多分に漏れず寄り道要素としての収集要素の側面が強い本要素だが、どれもが連続ドラマ風の構成となっておりシリーズ作でいえば『HALO3: ODST』のそれに近い作りになっている。内容もしっかり続きが気になる話造りになっているので本作の探索の片手間に集めると丁度良い塩梅だろう。

「原点回帰」且つ「捻り」が入った登場人物周り

登場人物についてもまた今までの反省からなのかかなり厳選した登場人物となっている。

本作の味方側の主要登場人物は主人公である「マスターチーフ」、アシストAIの「武器」、そしてペリカンパイロットの「エコー218」の三人だ。この凸凹トリオで基本話が展開されていく。

そして登場人物の頭数自体は、敵側にネームドキャラを多めに配置することで賑やかさ自体は維持されているのだが、かなり思い切った座組となっているのだ。

これは個人的な肌感覚だが、映画もゲームも小説もメインストーリについては話に関わる主要人物が少なければ少ない作品ほど肌に合う作品になる傾向を強く感じている。逆に登場人物が増えれば増えるほど、規模の大きさを実感しやすくはなるが、話の本筋がぼやけてしまうような感触を憶えてしまうのだ。

元コヴナント組の賑やかさは過去最高に楽しく、ちょっとした会話も字幕として表示されるので判り易くなっている点も有難い。サンヘイリは造形は言わずもがな、アンゴイは相変わらず可愛らしさと気の抜けなさが同居しているし、ギグヤーはHALO5で実装された地球語圏の吹き替え音声が今回も採用されており過去作の良いとこどりで、 レクゴロは相変わらずツーマンセルで寡黙に攻撃してくるし厄介な相手として機能している。敵側のジラルハネイの表現は、サンヘイリとの対比が強調されていた過去作に比べて思慮深さを覗かせておりくだりが増えており、敵としての敬意を同じくらい持てるまでなっており戦いがいのある相手として機能していた。今作のフォアランナー側についてもモニターが作中良い立ち回りを行っているし、ハービンガーの得体の知れなさも不気味さがあって良かった。

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そして本作『HALO Infinite』の話造り部分で特に良いと感じた部分に、今作では今までカットシーンないし幕間のスクリプト演出としての登場だった「ペリカンパイロット」をメインキャラの一人に据えた部分がある。

初代『HALO』の最終ミッションにてワートホグで凸凹した道を何とか乗り越え「やったー目的地だー!回収お願い!」と待ってた矢先の出来事は当時中々の衝撃だったかつての「エコー419( フォーハマー)」の立ち位置枠としての登場人物の掘り下げを行っていくという方向性は盲点だった。

彼はHALO本編でも珍しい等身大のキャラで今までにない切り口のキャラ付けになっている。そして今作に関しては乗り物を輸送するときは必ず彼が運んでくるし幕間の移動の切っ掛けになるので、結果として「エコー218」は機能ありきで配置されたキャラクターとして成立しているのだ。実際作中でも何だかんだチーフの無茶ぶりにもこたえるし結果的に「ヘタレで悪態はつくが実際頑張ってんじゃん」な塩梅のキャラクターになっているので仲間としての愛着を持ちやすい。要は「カウント(エースコンバット7)」や「デーモン・ベアード(Gears of War)」辺りの相棒or仲間ポジションとしてかなり好感を持っていたのだ。

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泣きつきながら振り回されるヘタレ枠は特に貴重なので今後も「エコー216」にはバディとして続投して欲しいし、これからもチーフの無茶振りに悪態つきつつも的確な支援よこす相棒キャラの立ち位置に居て欲しい。

仕切り直された相方AIとの遣り取りについても触れておきたい。今作の相棒枠のAIはコルタナから代理である「武器」になった。変な名前だけど実際「武器」って名前だよマジで。ワケあって作中この呼称で直接呼ばれる事ないけど。

コルタナに関しては3の幕間や終盤から4の序盤にかけて共依存の介護っぽさの片鱗が見えていたので、今回コルタナっぽい性格ながらコルタナではない程よい距離間でやり取りするのが丁度良かったし、加えて生まれて間もない感じが出て話ののめり込みに支障をきたさない程度に絶妙にイラっと来る空気の読めなさもスパイスとして機能しており、相方枠として『無印HALO』のキャンペーンを思い出す作りとなっていた。

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そして終盤の内容になるので深くは言わないが「ハルゼイ博士ならそういうことする」と納得できるくだりもあったのでポイント高かった。そらそうなるわな。あの人居ないと人類終わりだよマジで。

作中の文脈を眺めるまではローカライズの不備を一瞬危惧したが作中の会話で意味真な使われ方だったので正しい訳と判ったけど何ともハラハラするネーミングも考えたものだ。「ウェポン」とかそんな感じの直截的な訳に逃げずにこれで通すのかなり思い切り要る感じだろうし翻訳者さんお疲れ様過ぎる案件だった。

最後まで通して遊んだ後だと「武器」というネーミングは、かつての「コルタナ」や過去の別シリーズにおける「デュランダル」が剣の名前由来だった事もあり、複数の意味合いが備わった名前として納得度合いが高かったのだ。

チーフ自体にも秘密を抱えさせて進行に合わせて解禁されるオーディオログのシステムも非常に良かった。これによって行動原理を持たせつつ、無口気味に活躍する主人公という造形を過去作準拠で再現することに成功している。加えて今作のチーフのキャラ漬けは茶目っ気のあるDOOMスレイヤー的な立ち回りになっているのでカットシーンが見ていて頼もしく楽しい。

「ストイック」なカットシー

アートワーク関係でカットシーン周りにも触れておきたい。今作のムービー部分のカメラワークはいわゆる見えないカメラマンを用いた「トラッキングショット」と「長回し」を組み合わせた方式を採用している。*8

手持ちカメラっぽいカットシーン作り自体は『HALO:Reach』の時点で定点カメラ等々のカメラ演出のバリエーションのひとつとして採用されていた方式だが、本作『HALO Infinite』ではそれを更に強化した形式で、大幅な場面転換に差し掛かるまで可能な限りカット切り替えを排した形式となっている。*9

ゲームプレイからカットシーンに切り替わる際にプレイヤー視点からぬるりと視点が外れ周囲の状況を映すこのカメラワーク。(内部処理的な手間に対して)絵作りとしてはかなりストイックな仕上がりとなっているわけだが、これによってゲームプレイ部分からカットシーンまで地続きの没入感が維持され、結果として本作の状況である「孤軍奮闘」感を覚える事が出来る作りになっているのだ。

あとカットシーンの細かい点として、手持ちの武器が重火器を除き反映されるようになった部分は、地味ながらかなり大きい改善点だろう。過去作品だとゲームプレイ中どんな武器を持っていても、直後のカットシーン内では手持ち武器はほぼほぼ予め設定されていたものに強制的に持ち替えれていたのだが、この部分が改善されたことでゲームプレイ時の没入感を損なわないようになったわけだ。

20年ぶりの再訪

総評。本作『HALO Infinite』は改めて初代『HALO:CE』の要素を採用しつつ再構築された探索としての「初代HALOの続編」である。

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本作をもって今までの(特に直近の)『HALO』の方向性が間違っていたのかという点については声を大にして否定したい。寧ろ今までのHALOがあったからこそ今回の『HALO Infinite』は成立したといっても過言ではない。。いままでのフランチャイズとしての舵取りに不満があったわけではないが、

先にも書いた通り本作には過去の要素がシステムやフレーバー問わず過分に盛り込まれいる。紆余曲折を経て「これ」に辿り着いたという事実は今後の展開にも安心感を憶えることが出来た。前作ですったもんだあった諸々は今回でケリがつけばいいかなぁと思っていたし、実際ひとまずのケリはついたが、最後まで遊んだ結果「続きが見たい」という欲がぬるりと出てきてしまった。長生きはするもんだ。

『HALO Infinite』は初代HALOのミッション2「知られざる大地」を大幅に拡張した快作だ。「孤独感」「共闘感」「神秘性」これらの要素が初代『HALO』で特に魅力に感じていた自分にとって、20年経った今、HALOの本編にて広大な大地を探索できる新作が体験できたのは非常に嬉しい限りだ。かつて購入する切っ掛けとなった魅力を再び掬い上げ重視してくれた最新作として、本作を強くお勧めしたい次第である。

続編or新作orDLC諸々待ってます。敵から死んだと思われていたはずのチーフとして今回暴れまわったわけだし、同じく現状MIAで死んだと思われているアトリオックスとのケリをつけてほしい。

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備考:ここ最近見てた動画とか

Power On: The Story of Xbox | Chapter 4: Cool…Now What?
www.youtube.com

The Tragedy of Halo 3: ODST
www.youtube.com

Halo Changed Everything
www.youtube.com

Halo 2: Multiplayer Evolved
www.youtube.com

Halo 3 Brought us Together
www.youtube.com

TOP 100 VIRAL HALO INFINITE CLIPS OF 2021
www.youtube.com

19 Halo Infinite Tips & Tricks to Immediately Play Better
www.youtube.com

11 Halo Infinite Advanced Tricks You Didn't Know
www.youtube.com

Halo Infinite Beginner Tips #2 - Improve Your Aim, Strafing, Motion Tracker, & Map Control
www.youtube.com

*1:Marathon』が与えた衝撃を書くとさらに文字数が物凄い事になるので割愛する当時の時点でPvPvEのマルチプレイ採用してたり凄かったのヨ。話の流れで『MYST』の話題も出さざるを得なくなる

*2:この武器バランスの調整具合は往年の『DOOM』や『Marathon』に近いものとなっている。

*3:この項についてはマルチプレイ部分の話も過分に含まれている。

*4:と言っても勝率が半々以下でランクマにも碌に顔出ししてないカジュアル勢筆頭なのでその視点からの肌感覚ではあるが。

*5:一方で『HALO5』とは逆にスプリント中でもシールド回復される調整になっている

*6:さすがに今『HALO3』系を遊ぶと遅さを覚えてしまうので

*7:その分倒された際の原因も分かり易いので撃ち負けた際の悔しさもひとしおだったりする

*8:別IPの過去の例だと『MGSV』にて採用されていたアレ

*9:見えないカメラマン具合については、特に中盤のハービンガー初登場シーン時の周囲のオブジェクトを避けるように動くカメラワークで特に顕著だ